r a u  e r e i : 0


「あら、まだ7時なのね…」
昨夜寝床とした所から外に出て、近くにある公園の時計を仰ぎ見た。
思ったよりも、まだ時間が早い。白濁色の朝靄がぼんやりと辺りを包みこみ、何処か遠くでちちち、と鳥の囀る声が聞こえた。
自分が起きだしたことによって一緒にプリンもついてきたが、彼女は未だ寝ぼけ眼。足元も覚束なく、大きな目は閉じたり開いたりを繰り返している。
「ぷりり、まだ寝ていてもいいのよ」
そんなわけにはいかない、ご主人様が起きたのなら私も、とでも言いたげに彼女は一生懸命首を横に振る。
その可愛い仕草に微笑みをこぼし、朝の散歩にとブルーは公園内を歩き出した。
朝も早いだけあって、人は少ない。 ブルーのようにポケモンと散歩に訪れた人、早朝のマラソンに来た人に遭遇したのみで他に人影は皆無。

大きな木の下にある真っ赤なベンチに腰を下ろした。日陰になっており、元気な太陽の直射を遮られる。
もうすぐ夏。今日も気温が上がりそうだ。…それでも、朝はまだ涼しいが。
微弱な熱を帯びた風がふわりとブルーの長い髪を揺らす…そして木々の小さなざわめきが、静かな公園に聞こえるだけだ。


いつの間に近寄ってきたのか、足元でぽ、ぽ、と地面をついばんでいるポッポに、一瞬ドキリとする。
そしてすぐに、馬鹿みたい、と思った。
もう鳥を怖がる必要はないのに。 克服したじゃないの、伝説の三鳥まで操ったじゃないの―――でも、一旦しみついた精神的外傷トラウマは そう簡単には消えないのかもしれない。
昔のように取り乱すことはなくなったが、鳥の姿を見ると、今でも一瞬、(ほんの一瞬だけ、)胸がザワリと騒ぐのだ。

ふ、と息をつきポッポに指を差し出した。
いきなり出された指にポッポも戸惑ったようだったが、くちばしでちょんとブルーの指先をつつき、すぐに体を手の甲に摺り寄せた。
「…可愛い子ね」
おずおずと近寄ってきて、それから安心しきったかのように擦り寄るなんて…まるで、昔のシルバーみたい。
そういえば、と回想しかかった瞬間、指先のポッポはバサッといきなり飛び去ってしまった。
…プリンがポッポにじゃれついたのだ。
「あ…ぷりり、駄目じゃないの、ポッポを脅かしたら」
プリンは何故ポッポが何故逃げ出したのか、何故注意されたのかが解らないかのようにその大きな目を更に丸くした。
その無邪気な瞳は、見ている者の怒りを消してしまう。

「…いこっか」
そよそよと風も気持ちいいし、ここは散歩にはいい所かもしれないけれど…朝も早く、こんな人気のない所で一人時間を潰すなんて無粋なこと、このアタシらしくないわ。
何か面白いことはないかしら。そういえば、この前マサラの掲示板に――――


急に町の方へと歩き出した主人の後ろを、プリンは小さな足で一生懸命ついていった。


・・・Next