その日は、雷が酷く轟いていた夜だった気がする。


夕方は全くといっていいほどいい天気で、夕焼けがとても綺麗だったのに…夜になった途端、何かの不穏な空気を空が察しているかのように遠くから雷の低いうなり声が響き、
雨が降りそうな気配がして…月も出ていなかった。
…最も、自分は昼間の訓練で疲れてぐっすりと眠っていたのだが。

ふと、夜中に目を覚ました時、誰かの言い争う声を聞いた気がした。
「…そんなことが……いるだろう…」
「……ほしい………たいんだ」
誰の声だろう。体が重く、あまりに眠たくてそれを確かめることもしなかった。
一回寝返りをうって、うとうととまた目をとじる。
「…ないことだ………」
「……それでいい………」

ああ、先生の声だろうか。何だか、とても沈んだ声だ…あまり聞いたことがない。
自分の知っている先生はいつでもしっかりしていて、感情を露にすることはなくて…尊敬出来る存在で…

「………!」
「―――さようなら………」

しゃ、と何か布を引く音がして…そして、急に辺りが静かになった。
あとはただ、雷が煩かったのだけを覚えている。



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