涙なんて、とっくに枯れ果てたと思ってた。

涙を流した幼少期。
悲しいこと、つらいことがあると頻繁に流して流して。
それでも、誰も自分に手など差し伸べてくれなかった。

返ってくる反応といえば、
泣く自分をあからさまに嫌悪する母親。
それか、そんな自分を見て悦ぶ下卑た男。

どっちかくらいしかなかった。

だから、おれは諦めた。
いつの頃からか、泣くのをやめた。

今じゃ、そんな昔が不思議だったほどだ。
泣いて何を期待していたのだろう、あの頃の自分は?

自分が泣くより、他人が泣くのを見た方が面白い。
自分が泣くより、この愛刀によって流される血の涙を見た方が面白い。

泣くのは弱い、弱さなんて見せたくない。

それが解ったとき、涙なんて、枯れ果てた。


そうしていつの日か、感情はこの体から消えた。
人らしい喜び、悲しみ、怒り。
変わりに残ったのは、人を蔑む心と快楽主義。


そうやって、ずっと生きていくと思ってたのに。


大兄貴、あんたに出会っちまった。


こんなおれを受け入れてくれた日から、おれはあんたに翻弄されている。
大兄貴の何気ない一言、行動の一つ一つに喜んだり、悲しんだり、怒りを覚えたり。

涙を流す理由ってものを、知った。


おれは大兄貴のそばでしか啼けない。

…どうか受けとめてほしい、おれの弱さを。

おれは、あなたの傍でしか弱くなれない。