首元に、とても冷たい気配。
は、とそれに気づいたときには、世界は色を失っていた。
長い、ゆったりとした時間。
空ろに開けられたこの眸がとらえるのは、いつだって穢れた世界――――色を、失った世界。
…考える力すらない。
とても、首が冷たいんだ。
耳には、じいんとした何かの音しか捉えないんだ。
長い暗闇の中で、それをずっと感じていた。
空ろな目で、ぼやけている意識の中で、それを。
この目には、もう色は見えない。
ひやりとしたあの首の感覚。
あれから、…この世界は色を失った。
ただ見えるは、暗闇。黒。灰色。
永い闇の中で、やっと何かを感じた。
…首が、温かい。
空ろな目は、色をとらえた。
鮮やかな、色彩の世界。――――色を得た世界。
赤、青、黄、緑、茶、紫……白。
全てが、鮮やかに。
…首も、温かい。
…ああ、おれはまた目覚めたんだ。
あなたの存在する、鮮やかな世界で。